平和新聞 Peace Journal

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奄美で異常な低空飛行急増 オスプレイなど米軍機 107㍍の風車より低く飛行

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高さ107㍍の風車より低い高度で低空飛行する米海兵隊のMV22オスプレイ4機=2021年2月4日、奄美市名瀬大熊の風力発電所で(戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット提供)

 

 

 鹿児島県奄美市オスプレイなど米軍機による低空飛行の目撃情報が昨年以降急増しています。市街地近くで、航空法の最低安全高度を大幅に下回る高度での「超低空」飛行が相次いで目撃され、住民は事故への不安を募らせています。

 

有田崇浩(編集部)

 

 

 2020年度に鹿児島県危機管理局が集計した県内での軍用機などの低空飛行等目撃情報は137件(前年度比51件増)で、06年の統計開始以来、最多を記録しました。県が九州防衛局を通じ在日米軍への照会を依頼した昨年4~12月までの目撃情報89件のうち83件が「米軍機の可能性」と報告されるなど鹿児島県内では米軍機の低空飛行が常態化しています。

 中でも奄美市では急激に増加。20年度の目撃情報のうち、同市で確認されたものは90件と3分の2に上ります。特に、今年1~3月の目撃情報は55件を数えます。

 

◇いつか事故に

 

 奄美市総務課危機管理室によると、市に寄せられる目撃情報の多くがオスプレイやC130輸送機などの米軍機による低空飛行だといいます。

 「米軍機の低空飛行はここ1~2年で急激に増えた。最近では30~50㍍くらいの高度で超低空飛行することもある」

 同市で米軍機低空飛行への抗議運動を続ける市民団体「戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット」の城村典文代表はこう話します。

 今年2月4日には、米軍普天間基地に配備されているMV22オスプレイ4機が、市内にある風力発電所の風車(高さ107㍍)より低い高度で低空飛行する様子が確認されました(写真)。同日には、市街地近くの山あいをすり抜けるようにして飛行するオスプレイも目撃されています。また、昨年以降、編隊飛行や午後9時以降の夜間低空飛行の目撃も相次いでいます。

 城村さんは「漁師の真上を海面すれすれで飛行したこともある。住宅地の近くでは米軍機の飛行で窓が揺れるという声も聞く。いつ事故があってもおかしくない状況」と懸念します。

 奄美市を含む奄美群島周辺には、米軍によって低空飛行ルート「パープル・ルート」が設定されています。近年は米中の緊張の高まりなどで奄美を含む南西諸島での訓練展開が増え、既存の飛行ルート以外での低空飛行訓練も相次いでいると見られます。

 奄美群島では先月14日にMV22オスプレイ徳之島空港緊急着陸しました。2017年以降、奄美空港など民間空港への米軍機の緊急着陸は7度に上り、緊急着陸訓練の可能性も指摘されています。城村さんは「島民への説明も謝罪もない。勝手な飛行が繰り返され、米国の戦争のための訓練で主権が侵害されている」と憤ります。

 

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◇中止迫る声を

 

 日本の航空法では、人口密集地で建物の上端から300㍍、それ以外の場所では150㍍の「最低安全高度」が定められているものの、米軍に対しては日米地位協定の実施にともなう航空法特例法により適用が除外されています。一方、1999年1月の日米合同委員会において、日本の航空法と同じ最低高度基準を米軍機にも適用するとした取り決めが交わされています。

 2018年4月に米軍三沢基地青森県三沢市)所属のF16戦闘機が、高森高原風力発電所岩手県一戸町)の風車(高さ78㍍)間をすり抜けるように飛行する映像が公開され、波紋を広げました。これについて米軍は、最低高度基準以下の飛行であったことを認め、「(今後は)日本の航空規則を守る」と地元自治体に説明しました。

 奄美市で目撃されている同様の低空飛行においても、米側に対して強く抗議するとともに無法な低空飛行の中止を迫る必要があります。奄美平和委員会の荒田まゆみ事務局長は「低空飛行をやめさせるためにも、全国とつながって奄美の実態を発信していきたい」と話しています。

 

 

 

『平和新聞』5月15日号掲載

 

 

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